トランプ関税が発動された(ホワイトハウスの正式発表資料)。
中国には34%、ベトナムに46%、日本には24%と国別に違った関税率が適用されているが、新聞でも報道されているように、その計算方法は単純なもの。分かりやすいと言えば分かりやすいが、あまりにも単純すぎるとも思える。
【関税の計算方法】
(2024年の貿易収支(赤字額)/ 2024年輸入額) / 2
*例えば、中国の場合、(286,208百万ドル / 429,753百万ドル)/2 = 0.33(=33%)で、発動された関税率は34%。他の国もすべてこの計算方法で算出できる。
報道にもあるように、USTRの正式計算公式は、以下のとおり(USTR本文)

εは輸入価格に対する輸入の弾力性、φは関税から輸入価格への転嫁率としているようであるが、εは4,φはー0.25に設定されているので、εxφはマイナス1になる。miは、輸入額、xi – miは貿易赤字額なので、結局、貿易赤字額の輸入総額に対する割合を計算しているだけとなっている。
一方、発動された関税率が10%の国は、2024年の貿易赤字が10%以下もしくは、2024年の貿易収支が黒字国となっている。
2024年アメリカからみた貿易赤字上位20ケ国の計算上の関税率と発動された関税率及びその差(百万ドル)をみてみると、既に関税が発動されているメキシコとカナダは対象外で、それ以外の国に関しては貿易赤字額からの計算と発動された関税率がほぼぴったり一致する。例外なのはEU諸国で、EUには一律20%が適用されているが、EU諸国毎で赤字、黒字国と大きく開きがある。アメリカからみて赤字国であるアイルランド、イタリア、ハンガリーは(下表の青色部分)、貿易収支上は、20%より赤字額は大きいが、EU諸国ということで20%ですんでおり、言い方は悪いが、”得”をしていることとなる。例えばアイルランドの計算上の率は42%であるが、EUということで発動された関税率は20%。ドイツ、フランスは計算上の率が20%より少し上なので、ほんの少し”得”となる。EU一律という時点で、整合性がとれていないと思う。
2024年アメリカからみた貿易赤字上位20ケ国の計算上の関税率と発動された関税率及びその差(百万ドル)

一方、貿易黒字国は一律10%であるが、EU諸国の中でアメリカから見て黒字国であるオランダ、ベルギー、スペインは(下表のピンク部分)、黒字国なので、一律10%のはずが、EUということで20%が適用され、”損”な状況となっている。特にオランダは、オランダから見た場合、577億ドルもの”赤字”なのに(アメリカからみると、一番優良国のはず)、今後さらに20%の関税という状況。
2024年アメリカからみた貿易黒字上位20ケ国の計算上の関税率と発動された関税率及びその差(百万ドル)

*計算上の関税率は、分かりやすくするために、(-1)をかけて符号を反転させている。
ロシア、北朝鮮、グリーンランド、香港、キューバ等、一部の国への関税率は設定されておらず(もし間違っていたらご指摘ください)、これらは政治的に意図的なものかどうか疑問が残る。
【注記】
データの引用元は、ITC (U.S. International Trade Commission)。
輸出額は、ITC データベースの輸出合計 (Exports: Total)。
輸入額は、後日、関税率などを算定すること等もあり、一般輸入額 (Imports: General)ではなく、消費用輸入額 (Imports: Consumption)の関税評価額(Customs Value)を引用している。