今の世界を知る "元の" データ集 / 統計分析、因果推論

中国の報復関税 推定額 

トランプ新政権の中国への10%の関税への報復として、原油、石炭、液化天然ガス、農機具、一部の大型自動車に10%の関税を2月10日から掛けると発表した。

そこで、現時点で対象となっている分野について関税額がどの程度になるかみてみた。

まだ、詳細のHSコードなどが分からないので、あくまで想定であるが、報復関税対象分野、石炭(HSコード:2791)、液化天然ガス(HSコード:2711)、石油(原油)(HSコード:2709)、ピックアップ、トラックなどの自動車(HSコード:8701,8702,8704)、農機具(HSコード:8432,8434,8435,8436)とした場合、これらの2024年11月末までのアメリカから中国への輸出(FAS額)合計は、131億ドルで、石炭、液化天然ガスに15%、それ以外に10%とした場合、関税想定額は16.6億ドルとなる。

2024年11月末時点でのアメリカから対中国輸出黒字分野トップ10と報復関税対象分野(ピンク部分)と報復関税想定額(百万ドル)

(注)算定輸出額は、FAS額で、アメリカからの輸出手数料、中国までの配送費、保険、中国での輸入手数料は含まれていない。関税はCIF額に対して掛けられるので、実際の関税額はこれより大きくなる。

一方、もしアメリカが中国からの輸入全ての分野に対して10%の追加関税を掛けると、2024年11月末までの輸入額3,933億ドルの10%で393.3億ドル、貿易赤字トップ10分野のみでも78.6億ドルとなり、中国の報復関税の額16.6億ドルは小さいと言える。

特に、中国にとって一番大きな赤字分野である大豆や航空機には関税を掛けない、さらに農機具は、中国にとって貿易収支はほぼゼロもしくは赤字という分野であり、単純に貿易赤字額ではなく、パフォーマンス的な要素が強いのではと考えられる。つまり、中国国内対策として、報復関税を掛けるという強気の姿勢を示しつつ、アメリカに対しては、実害のあまりない分野に限定、“配慮”をした上で、協議に持ち込むという考えとも思える。

2024年11月末時点でのアメリカから対中国輸出赤字分野トップ10と、それらへの10%関税想定額(百万ドル)

(注)輸入額はCIF額ではなく、算定評価関税額

【注記】
データの引用元は、ITC (U.S. International Trade Commission)。
輸出額は、ITC データベースの輸出合計 (Exports: Total)。
輸入額は、後日、関税率などを算定すること等もあり、一般輸入額 (Imports: General)ではなく、消費用輸入額 (Imports: Consumption)の関税評価額(Customs Value)を引用している。