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今の世界を知る "元の" データ集 / 統計分析、因果推論

関税でアメリカの輸入は減少したのか?

簡易的に関税の影響を図るために、2024年1月~7月と2025年同時期のアメリカの各国からの輸入額集計の差をみてみた。

輸入額総額の差では、中国からの輸入額の減少が443億ドルと最も多く、次にカナダからの輸入で102憶ドルの減少。そして、韓国からの22億ドルと続く。日本からの輸入減少額は8億ドルであった。

もちろん国によって、関税額が異なるので、輸入額減少額の差を簡単に比較はできないが、簡易的に、2024年1月~7月を”関税なし”、2025年1月~7月を”関税あり”、として、差の検定をおこなってみた。前提として、2025年1月~7月の輸入額の上位30ケ国を対象として、同じ国での比較なので対応あり、分布は正規分布とは思えないので、ノンパラメトリックのウィルコクソンの符号付き順位検定としたいが、差の分布は対称性があるとは思えないので、符号検定としたい。有意水準5%の片側検定で、帰無仮説は、関税により輸入額に変化はない、とした。

輸入額総額では、p値は0.072となり、帰無仮説は棄却できず、輸入額が変化したとは言えないという結果であった。これは、輸入額の大きい(つまり貿易赤字の大きい国)国は、輸入額が減少しているが、貿易黒字の国など含め、2025年に輸入額が増加している国が上位30ケ国中19ケ国におよんでいることによる。これだけをみると、中国からの輸入額は大幅に減少させることに成功している一方、全体の輸入額は減少しておらず、トランプ政権の意図が成功しているように思える。

輸入総額 2024年1月~7月小計と2025年1月~7月小計の差の符号検定

輸入総額の差のヒストグラム

一方、自動車(HSコード:8703)(*中古車含む)のアメリカの各国からの輸入額の差をみると、韓国からの輸入が46億ドルと最も減少しており、次に、カナダからの19億ドル、そしてドイツからの18億ドルと続く。日本からの輸入は17億ドルの減少であった。上記と同じ条件で検定してみると、P値は0.00529と小さく、確実に関税の影響で輸入額は変化(減少)していると言える。

自動車輸入額 2024年1月~7月小計と2025年1月~7月小計の差の符号検定

自動車輸入額の差のヒストグラム

【注記】
データの引用元は、ITC (U.S. International Trade Commission)。
輸出額は、ITC データベースの輸出合計 (Exports: Total)。
輸入額は、後日、関税率などを算定すること等もあり、一般輸入額 (Imports: General)ではなく、消費用輸入額 (Imports: Consumption)の関税評価額(Customs Value)を引用している。

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