今の世界を知る "元の" データ集 / 統計分析、因果推論

トランプ新政権発足前の駆け込み輸入 2024年12月

トランプ新政権が関税を大きな武器としてくることは当選前からもわかっていたと思うが、実際に当選後、それらが現実となった段階での駆け込み輸入があったのかどうかみてみた(輸入のタイムラグもあるので、一つの参考データ)。

アメリカの輸入の季節性として、毎年10月ピークで12、1、2月はそれらより落ちるのが例年の傾向で、11月から12月の平均的な差は(2015~2023年の9年間平均)マイナス33億ドルなのが、2024年11月から12月は102億ドル増加しており、一定の駆け込み輸入はあったと言える。

過去10年間の月単位の輸入額推移(百万ドル)

過去10年の11月と12月輸入額の差(12月―11月)推移(百万ドル)

2024年輸入額上位20ケ国をみてみると、これらの国小計で57億ドルなので、全体の増加額102億ドルのうち56%を占めている。国別でみると、11月から12月で大きく増加しているのは、スイス(79億ドル:ほとんどが貴金属)、カナダ(21億ドル:石油)、台湾(10億ドル:一般機械、電気機器)であった。日本は、11月とほぼ同額で、平均(1.8億ドル)より減少していることから、特に駆け込み輸入があったとは言えない状況。逆に大きく輸入額が減少しているのはアイルランド(36億ドル:医療品)とメキシコの27億ドル:電気機器)であった。

中国は、例年、昨年同期と比較すると16億ドル増加しているが、2024年では、0.2億ドル増加していることから駆け込み輸入があったと考えられる。

2023年の11月、12月の差(マイナス105億ドル)から2024年は102億ドルと大きく増加しているが、2024年は通年を通じて、2023年より輸入額が多いので、この差(207億ドル)すべてが駆け込み輸入とは言い切れず、さらに分析が必要。また、輸入は供給側(輸出国)のみの事情だけではなく、アメリカ市場での需要があって成り立つので、これら増加分が全て供給側の意向とは言い切れない点も注意が必要。タイムラグで1月にも増加する可能性もあるので、引き続きみていきたい。

2024年輸入額トップ20ケ国の11月から12月の状況(百万ドル)

2024年輸入額トップ20ケ国の11月から12月の状況(百万ドル)

【注記】
データの引用元は、ITC (U.S. International Trade Commission)。
輸出額は、ITC データベースの輸出合計 (Exports: Total)。
輸入額は、後日、関税率などを算定すること等もあり、一般輸入額 (Imports: General)ではなく、消費用輸入額 (Imports: Consumption)の関税評価額(Customs Value)を引用している。